南海泡沫事件 その1 ちょっと昔の事件に関して興味を持ちました。南海泡沫事件 South Sea Bubbleというやつです。虚実皮膜の間にありの世界ですね。まあ200年ほど前に起こったバブル事件です。雰囲気だけで株が買われそして多くの人の財産が消滅した事件です。 この背景には英国政府の多額の国債の処理が絡んだ事件です。そして、事業としては成立しそうもない会社の株の売買により起こった事件です。この事件に興味を持ったのは、近頃のインターネットとかIT関連株の異常な高騰が気になるからなんです。この事件もある意味、南米大陸との交易が金になるぞ!というあたりに端を発しているからなんです。 さて、前置きはこれくらいにして、南海会社とは、このあたりからはじめましょう。南海会社、これは1711年にスペイン領南アメリカおよび太平洋地域と貿易を行うことを目的として設立されます。しかし、実質的な活動はあまりありませんでした。年に1隻の船による交易の権利と、基本的には黒人奴隷の輸送でしたから、この時代、すでにキャプテンドレークなどの時代とは異なり、結構普通の交易が中心になっていました。しかし、英国東インド会社の成熟やら、英国の重商主義の影響やらで南海に希望が見えた時期でもありました。 この時期、英国の政府は頭痛の種を抱えていました。それは戦争などでの多額の債務、国債なんですね。この国債の利息の支払いが大変になってきた時期なんです。実はこの時期よりちょっと前、フランスでも国債の問題がありました。しかしジョン・ロー John Law (1671―1729)のフランス財務総監としての采配により結構上手に国債を処理していきます。これにあやかって、なにやら画策した結果、南海会社による国債の整理へとまわるわけです。 このシステムは結構微妙なもので、株価が上昇しつづけることを前提に画策されたものなんです。まあ、ちょっと近頃、情報関連のどこかの会社の株価が上がって・・・なんて聞きますからね。そんなことを聞くと、ちょっとな?と考えてしまいます。 さて、この南海会社なんですが、当時の夢が株に結びつき、それを裏では国債の整理なんかを考えてのことだったようです。この南海会社、実際の利益は上げていなかったんです。毎年船をアフリカから南米へ廻していましたが儲けは微々たる物でした。しかし、当時の南米やアジア貿易が、東インド会社などで着実な利益を上げていたことと、まさに夢!が結びついたというものだったようです。 ちょうど、いまITとかが夢を運び、実際の利益は?配当を出さない会社やら、どこかの本屋さんのように、累積赤字は膨らむものの・・・止めておきましょうね。ちょうど、それに近いことがその南海会社の基盤にあったようです。 しかし、政治家への根回しと夢が、状況を変えました。当時イギリスが見た夢はジョン・ローの構想に政治家は夢を見ました。それは銀行の設立と紙幣の発行の国の財務への有効性を喧伝し、ルイ14世死後の摂政時代に、個人銀行を設立します。そして1その2年後、この銀行を国家銀行に改組することを認められ、発券銀行の地位を得ます。そして、この地位による信用により経済の活性化に成功を収めました。 なんだか、現在の、どこかの国の政府がミレニアムプロジェクトとして騒いでいることに似ていなくもないですね。そして、もっと凄いことに累積した(財政赤字、まあ赤字国債をきれいにして健全な財政に立て直すことを標榜するようになります。そして、その手段として、銀行と貿易会社と国家財政とを統合するシステムを考え出します。まあ、株への再投資による無限の富の創出と言っていいですかね?ちょうど、土地神話の株式版です。一般に「ローのシステム」として知られているやつです。よく出てくる説明によれば、ローの銀行の発行した15億ルーブルの紙幣をインド会社という独占的貿易会社が引き受けてこれを国家に貸し付け,政府はそれを債務の償還に当て,他方でインド会社は15億リーブルの増資新株を募集して,償還金として発行された紙幣を市中から回収するというやつです。 つまり、紙幣を大量に刷ります。これを、株価が高いインド会社が何とかするといって貰い受け、それを政府へ貸します。政府はこのお金で一息つきます。インド会社はローの銀行にお金を戻さないといけないので、大量に株を新規に発行します。そして、その株の売上で、紙幣をローの銀行へ戻すというシステムです。ほら、株価が安定して上昇すれば、別に問題ないでしょ!しかし、この株価上昇の連鎖はそれほど長く続きません。そこでバブルがはじけるわけです。 さて、英国ではローがフランスでやったようにはうまく進みませんでした。それはイングランド銀行なんて、中央銀行がすでに存在していました。そして東インド会社という伝統ある、利益をきちんと出しつづける国策会社のようなものもありました。そこで南海会社は、株をばら撒きます。いや、政治家に株を預けます。そして株価があげれば、その差額を利益として与えることで、多額の賄賂を与えたりします。そして、この時代、株の売買がはやるんですね。 政治家も、猫も杓子もこぞって株を・・・・という時代だったのです。 |
Akamac_E-text_JLinksのLaw, Jこんなところにも文献資料がありますね |